香酢は中国で生産されるお酢で、香りが豊かである事から、香酢と呼ばれると言われています。実は、中国四大名酢として山西老陳酢、鎮江香酢、四川保寧酢、福建永春老酢(烏酢とも呼ばれる)があります。
これらのなかで、山西老陳酢は中国で生産される酢の元祖といわれ、今から約1800 年前の明・清時代に製造方法が確立されたものです。共通しているのは長期間熟成することで、褐色の色素成分であるメラノイジンを含んでいることにより、色は黒酢と同じ褐色をしています。
香酢の製造法もここから発展したものです。ただし、原料は生産される地方により異なり、江蘇省の鎮江香酢や、雲南省の禄豊香酢は、もち米を使用します。
日本の黒酢は、鹿児島県福山町で200年ほど前に中国の職人から製法を伝えられたともいわれている酢が元祖です。そして、農林水産省のJas規格では、2003年7月に黒酢の定義が次のように定められています。
「黒酢は、穀物酢のうち、原材料として米、または小麦もしくは大麦を加えたもののみを使用したのもので、米の使用量が穀物酢1リットルにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色、または黒褐色に着色したもの。」
したがって、香酢と黒酢は、原料が異なりますが、どちらも発酵および熟成によって褐色、または黒褐色に着色しているのは共通しています。
この原料の違いによって、個々の製品において含有成分が異なることは想像できるところです。
また、香酢には、8年間熟成させてつくられる香醋があります。メラノイジンは、熟成する期間が長いほど健康効果が得られるとの報告があります。他にも様々な成分が熟成することで増えたり、良い作用をもたらすと考えられています。
香酢も黒酢も熟成することで造られますが、最近では10年から20年もの長期間熟成する黒酢もあるようです。香酢と黒酢の違いとして明確にいえるのは生産国の違いと、原料の違うこと、醸造方法が異なることです。
香酢も黒酢も熟成して造られる酢です。大枠では同じ酢の仲間といえます。したがって、成分的には、香酢と黒酢という枠で比較するよりも、個々の製品として比較するのが適当であると考えられます。